本研究は、「臨床社会学」の理論的、実践的な可能性を探求する目的をもつものであるが、本年度は、現代社会における「臨床社会学」の実践的可能性を探求するために、実証研究として、医療・福祉分野と芸術の分野との交差領域において、研究を進め、「障害者とアウトサイダー・アート:医療・福祉とアートの交差」『社会的コントロールの現在:新たな社会的世界の構築をめざして』(宝月誠、新藤雄三編、世界思想社、2005年所収)を作成した。 東京近郊のある精神病院をフィールドとし、精神障害や神経症等の症状を示す人々が、どのように自らの状況を意味づけ、他者に対して、言語的またアートのような非言語的表現によって、自己表現することで、コミュニケーションをもっているか、また他者はどのように共感を示しているかというプロセスに関して、調査・考察をおこなった。 また、理論的には相互作用論をもちいたが、シカゴ学派の理論的支柱であるプラグマティズム哲学者のジョン・デューイの芸術社会学理論から、ハーバート・ブルーマーのシンボリック相互作用論を経て、第二次シカゴ学派であるハワード・ベッカーの理論への継承と展開を考察した。自己論・社会的関係・社会的相互作用・社会の変化という三者の相互関係性を中心において、報告書を執筆中である。
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