研究課題
本研究プロジェクトは、「組織虚偽」の生成過程を解明する第一研究と、組織の社会的信用を向上させる企業努力を分析する第二研究から構成された。本年はプロジェクト最終年として、無記名式のアンケート調査を実施した。第一研究では、これまでに明らかにしてきた組織虚偽のメカニズムが、事故を不祥事へと転化させていることに注目し、これらをコミュニケーション・リスクと名付け、社会心理学的な定量分析を試みた。大規模なアンケートによって、日本人の日常的コミュニケーションに潜む「負の部分」を約20の構成概念から調査・分析した。また、従業員の倫理意識についても調査した。現在も分析中であるが、予備調査段階で明らかになった点として、ある強い相関関係が見出された。つまり、組織のアイデンティティーが強まり、そこに同調統制(価値観や態度を同じにしようという暗黙の統制)が現れ、また上司に対し情報を歪めたり捏造する(上方向偏向)、目的と手段が本末転倒するような物象化的転倒性が強く結びついている。この発見は、組織の日常的コミュニケーションが、業務遂行・目的達成のために合理的に行動されているだけでなく、組織と社会にマイナスをもたらす負の部分(コミュニケーション・リスク)を持っていることを明らかにするものである。またこのアンケートをもとに、組織のコミュニケーションリスクに関する診断・アセスメントが可能となりつつある。Webページによるツール開発である。回答結果はハイリスク、ローリスク、個人リスク、組織リスクという4つの象限における分布によって分析診断される。第二研究でも社会調査が実施され、中小企業の経営者へ、CSRに関する取り組みと経営者の倫理観についてアンケートした。現在も分析中である。事例研究の続きとして、三菱自動車を取り上げ、組織アイデンティティーが変形(transformation)するコミュニケーションプロセスを本年6月に学会発表する。
すべて 2006 その他
すべて 雑誌論文 (2件)
Case Studies in Organizational Communication: Ethical Perspectives and Practices
ページ: 287-304
56^<th> Annual Conference of International Communication Association (第56回国際コミュニケーション学会年次大会)ドレスデン、ドイツ