今年度は地域共有資源管理の事例として2つの調査地をとりあげた。竹富島と座間味村(座間味島・阿嘉島・慶留間島で構成)である。当初計画では竹富島と久高島を予定していたが、テーマの特性、緊急度から座間味村に変更した。 竹富島は、沖縄独自の木造家屋とサンゴをつかった石垣、そして舗装していない白砂の道という町並み保存とその観光で知られた島である。座間味村は、沖縄島沿岸のサンゴ礁の幼生供給を担うサンゴ礁が唯一良好に保たれ、島民はそれを観光資源として生計を営んでいる。今年度の研究では、それぞれの島で地域資源を利用かつ保全するうえでどのような課題が持ち上がってきているのか、丹念に調べることにした。 竹富島では町並み保存を開始してから20年の節目の年であり、近年の沖縄離島ブームから観光が活況を示している反面、町並み景観の維持をめぐって住民の間で意見の不一致が起きている。より大きな経済的な収入を得るために町並み景観を利用とするのか、自分たちの内面的な規律が保たれてこそ景観も維持することができ島の発展につなぐことができるとするのか、この2つの見解の間を揺れ動いているといえる。 一方、座間味村では、その慶良間海域がラムサール条約登録されたことを機に、隣の渡嘉敷村と連合を組んで海域保全利用を推進する動きが出てきている。それは、本島沿岸のダイビング業者もまた慶良間海域のサンゴ礁を利用して事業を行っており、ここでサンゴ礁の観光資源としてのオーバーユースが問題となってきているからである。これに対して、座間味・慶良間側のダイビング事業者は、サンゴ礁を食害するオニヒトデの駆除に取り組み、海域保全利用のルールを自主的に定めるなどして、サンゴ礁の保全に努めている。 今年度はこのように、地域共有資源のコミュニティ・ベースの保全利用とその葛藤について調査を実施し、‘ローカル・ルール'をめぐる権力的基盤について考察した。
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