本年度は、これまでにコンタクトのとれた医師に対して、引き続きインタビューを行った。また、それぞれの医師の活動現場(職場や研究のフィールド、その他)に身をおきながら、参与観察した。療養所を辞してから地域医療の世界に身を投じたある医師は、地域社会におけるハンセン病経験者の生の支え手となるべく、試行錯誤の毎日である。ここからハンセン病問題に関する社会福祉的課題がほのみえてきている。 療養所入所者や退所者に彼等のライフストーリーの文脈における医師との交流経験(被診療経験、治療による「被害」経験等々)について聞き取りをおこなった。今に続く重い障害や後遺症を残すきっかけとなった治療をおこなった医師への糾弾の矢は非常に鋭い。他方、療養所のなかで死に直面したときに、医師の的確な処置によって命拾いした経験は、医師に対する評価をよいものとしていた。 また、本研究のひとつの柱である、国立療養所内における医療過誤訴訟の控訴審について、継続してフォローした。公判を傍聴し、内容把握につとめた。結果は、第一審を支持する和解で終わったが、国立療養所に第三者機関による審査が入ることになり、原告およびそれを支援した現役医師たちの達成感は大きかった。
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