本研究では、ソーシャルワーカーの専門的力量形成過程における支援システム構築に向けて、2つの調査を実施した。 まず、現場実践経験年数の異なる2つのグループによる同一事例の検討結果を比較したところ、中堅ワーカーには次の4つの傾向があることが見出せた。(1)一つのアプローチを行う際にその根拠が明確な点、(2)個々のアプローチが全体的な援助展開のなかでどのように位置づくのかを確認しながら進めていた点、(3)若手ワーカーの発言からはみられなかった高度な面接技法を活用しようとしている点、(4)若手ワーカーよりも多様な視点を持っている点。 そして、熟達化研究の視点からは、(1)ソーシャルワークの価値・理論と現実状況とのマッピングがスムーズに行えるための、事例検討やスキル獲得に向けた教育・研修の必要性、(2)ソーシャルワーカーの「倫理綱領」や「行動指針」を念頭に置いたうえでの自己評価の機会が必要性であることが考察された。 また、20代・30代のソーシャルワーカー各10人を対象に行った生活史調査からは、何人かに共通する専門的力量形成を促進する契機を抽出することができた。 そして、それらの結果をキャリア発達の視点から検討したところ、20代のソーシャルワーカーの専門的力量形成を促す方向性としては、知識・技術面での安定した力量を身につけ、仕事の継続を可能にするための職場内外での研修会やスーパービジョン等の場の提供が必要であることが見出せた。また、30代のソーシャルワーカーにとっては、多様な生活状況に応じた職務形態や職場環境の整備等支援態勢の確立、組織での役割や職位の変化に伴うノウハウを保する機会の提供等の必要性が見出せた。
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