研究概要 |
平成16年度は,昨年度に介護支援専門員ならびに介護福祉士資格保有者を対象に実施した介護課業・能力に関する大量観察調査の結果をふまえて、主訴に対応するケアプロセスの構築・運営に関わる各種専門職の能力の最適な組織化のあり方について事例参与観察ならびに専門的知識・資格保有者への聞き取り調査を実施した。これには,(1)「主訴」の発見から解決までのプロセス設計や組織構築のあり方(各種専門職間および同一専門職内における相互連携,情報の共有・同時化の程度,仕事の形式主義・硬直主義を回避するための工夫など),(2)組織的な能力育成の仕組み(特に,現場での育成や知的伝承の仕組み),(3)プロセス管理の仕組み(職務ルールや権限関係,最終決定責任の所在など),の3点を対象とするものであった。 明らかになったことは次のとおりである。 (1)ケアプロセス構築にとって、ケアマネジャーの情報認識・判断力が決定的に重要である。チームケアを実施する場合にも、ケアマネジャーの判断・役割がいかにクライアントに近接したものになっているかが決定的である。その場合に、ケアマネジャーの立場・判断は、クライアント、家族、ケアに関わる各専門職などの思惑や行動を総合的に妥協調整しながらも、その中でクライアントの立場を基本的に護ることに置かれることになる。 (2)職場・仕事組織や仕事の割り振りが、そのようなケアマネジャーを核にしたチーム形成という原則をふまえたものになっていないことがほとんどである。配置、シフト設計といった管理的要素と、ケアサービスの最適化といった機動的・裁量的要素との齟齬が主要原因となっている。 (3)現場の感覚で「できる」「すごい」と捉えられるケア空間マネジメントの場面を日常的に捉えることができる。その際、当事者が発揮している能力は、情緒的なものというよりも、一定の経験学習的要素を含む暗黙知的なものと解釈できる。
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