研究課題
基盤研究(C)
本研究の課題は、大きくわけて、(1)認知症高齢者の生活自立を妨げる「主訴」への専門的対応能力のあり方の検討、と、(2)そのケアプロセスにおける最適組織化の検討、からなっており。認知症については、臨床医療面において鑑別方法やBPSD等の行動学的心理学的特性に関する研究が進んできているおり、薬物療法と非薬物療法(介護ケア、環境整備等)との最適な役割分担いついても疫学的検討が進んできている。また、全国3箇所の認知症研究・研修センターを中心に、経験的・臨床的エヴィデンスの集積を中心においた認知症ケアの標準化作業も進められている。そうした、臨床技術論の領域における認知症ケア研究の進展とあわせて、ケア資源やケア提供システムの規範的基礎や原理に関する研究も進められる必要がある。本研究では、平成15年度ならびに平成16年度において、上記(1)に主として係る規範理論アプローチにたった介護資源としての職務能力の考え方とその公正分配の研究に柱を据えた。平成17年度には、主として(2)に係り、ケアプロセスにおける医療(とくに看護)と介護の連携問題と介護予防的目標に沿った機能連携の問題に関して、先行研究の検討ならびに海外先進事例の分析を実施した。本研究では、まず、認知症の鑑別類型にそった療法研究の到達点を介護ケアの役割領域を明確化するという視点から整理した(報告書第1章)。ついで、クライアントの生活自律(自立ではない)保障という機能的視点からケア能力資源の位置づけと不偏的・普遍的な能力資源提供の規範的根拠について明らかにした(同第2章)。また、WHO憲章の積極的な「健康」定義を踏まえて、心身機能障害の予防ということを超えて、生活自律能力における障害や社会的機会への障害を予防するという意味での心理的行動学的活動性の保障という意味での予防的ケアの必要性を主張した(同第3章)。また、そうした予防概念をふまえて、それを実施する専門的職務能力における「暗黙知」「感性」の重要性を試論的に検討し(だ同第4章)、その上で、既存の調査データの再加工を行ないながら介護職の職務能力とケアプロセスの関連性を検討した(同第5章)。本研究では、残念ながら、認知症介護対応型の地域包括ケアシステムの構想にまで研究を進捗させることができなかった。この点は、今後に残された課題としている。
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