研究概要 |
本研究は、介護保険制度の施行以降、変貌しつつある高齢者に対する社会福祉援助技術を計量的に把握・分析し、その実態や特性を明らかにするとともに、21世紀に求められる社会福祉援助技術のあり方を提起することを目的としている。研究初年度にあたる平成15年度においては、当該テーマに関する文献レビューを行い、論点および枠組みの検討を行った。この検討により、従来の社会福祉援助技術と介護保険のもとで制度化されたケアマネジメントの概念上および実践上の混乱が顕在化していることが明らかになった。 こうした現状に鑑み、地域で実践活動に従事している介護支援専門員の業務分析調査を実施した。本調査は、東京近郊A県の委託をうけてA県社会福祉協議会が実施した介護支援専門員「専門課程」研修受講者154名に対する集合調査であり、34項目13領域にわたるケアマネジメント実践の達成状況を評価し、34項目7領域からなる阻害要因の影響力について検討を行った。その結果、介護保険制度に限定的な「基礎的ケアマネジメント」は概ね実施できているものの、権利擁護や地域資源の開発など社会福祉援助技術の一部をなす「発展的ケアマネジメント」の達成状況は低いレベルにとどまっていることが明らかになった。また、阻害要因では、時間不足に代表される「劣悪な勤務環境」とそれに伴う「バーンアウト」が多領域に及ぶケアマネジメント実践を阻害しているほか、基礎的ケアマネジメントでは「面接技術の未熟」、発展的ケアマネジメントでは「若年齢」であることが阻害要因になっていることが判明した。 これらの研究成果については、第7回アジア・オセアニア国際老年学会(2003, 11.東京)で報告を行ったほか、『人文学報』(NO.349, 2004.3)において「介護支援専門員によるケアマネジメント-阻害要因の計量的分析-」として論文発表した。
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