本研究は、介護保険制度の施行以降に変貌する高齢者に対する社会福祉援助技術(ソーシャルワーク)を計量的に把握・分析し、その実態や特性、及び課題を明らかにすることを目的としている。 研究2年目にあたる本年度は、高齢者を支援する居宅介護支援事業者の介護支援専門員(ケアマネジャー)・ソーシャルワーカーが苦悩する「困難ケース」に着目し、欧米における先駆的な社会福祉実践や、介護保険施行以前および以後の高齢者福祉の領域における困難ケースに関する実践や先行研究を検討するとともに、昨年度に実施した介護支援専門員への調査を統計的に分析し、高齢者ケアマネジメントの実践における困難ケースの実態や規定要因の分析を行った。その結果、平均困難ケース数は、ケアマネジャーの担当ケースの約14%にあたり、困難ケースにおける問題特性では、高齢者の精神的問題や介護力の脆弱化による当事者サイドの意思決定能力の低下、サービス利用拒否などが特徴的であり、それらが重層化する傾向にあることが明らかになった。一方、援助者サイドの問題点として、当事者の意思決定が困難な場合の業務範囲の不明瞭さや、行政や他機関との連携が困難であることなどが判明した。このような困難ケースへの対応については、1)体系的な調査による実態把握、2)問題の重層性の認識、3)家族全体を視野に入れた包括的アプローチの採用、4)行政によるリーダーシップと関係機関との協働、5)予防的視点によるアプローチが必要であることを提起した。 さらに、本年度は、介護保険施設(介護老人福祉施設および介護老人保健施設)における生活相談員・支援相談員のソーシャルワークおよびケアマネジメントの実態を計量的に把握・分析するために、全国の上記施設より1000施設を系統抽出し、11月に郵送調査を行い、481施設の相談員より回答を得た。現在、データを分析中である。
|