研究課題/領域番号 |
15530371
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
里見 賢治 大阪府立大学, 社会福祉学部, 教授 (90071216)
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研究分担者 |
嵯峨 嘉子 大阪府立大学, 社会福祉学部, 講師 (30340938)
武田 宏 大阪府立大学, 社会福祉学部, 教授 (70179646)
中山 徹 大阪府立大学, 社会福祉学部, 教授 (40237467)
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キーワード | 低所得・ボーダーライン階層 / 野宿生活者 / ホームレス / 社会的セーフティネット / 多段階型セーフティネット / 社会的インクルージョン / 公的扶助 |
研究概要 |
研究初年度の本年は、低所得・ボーダーライン階層問題の矛盾の集約点であるホームレス問題の理論・政策研究の前提として、ホームレスの実態を再整理するために、過去の調査(大阪市・大阪府・東京都・広島市・北九州市・厚生労働省)を比較検討し、また施策の実情を把握するため、大阪市の3つの自立支援センター(大淀・淀川・西成)の実地視察・ヒアリング、大阪市野宿生活者巡回相談事業や釜が崎元気百倍ネットのヒアリング、さらに北九州ホームレス支援機構、東京ふるさとの会・スープの会などの現地視察・ヒアリングを実施した。これらを通じて、ホームレスに落層する主要な要因、ホームレスの実態、ホームレスに対する施策の現状、支援団体の多様な支援の現状と到達点などについて、整理することができた。その結果、最後のセーフティネットとして機能すべき生活保護制度が、1990年代において必ずしも十分に機能せず、落層する多数の者がネットの網の目からこぼれ落ちる結果となり、それが日本のホームレス問題を深刻化させてきた最大の原因であること、ここまで問題が深刻化してきた以上、公的扶助制度の再活性化と拡張が急務であるだけではなく、施策の総合化、とくに住宅政策や雇用政策との連動が求められていることも明らかである。 研究2年目の来年度(平成16年度)は、低所得・ボーダーライン階層の野宿生活への落層を予防する多段階型セーフティネットのあり方と、すでに落層した野宿生活者の社会的インクルージョンの方策の双方について、理論的・政策的検討を進める予定である。同時に、われわれは日本のホームレスの実態把握を踏まえて、日本のホームレス問題が、欧米とくにアメリカのそれと比較して、精神障害源発性要因が相対的に少ないという仮説(もっとも、これ以上放置するとその限りではなくなると推定される)を立てているが、その真偽を検証し、その政策的含意についても明らかにしたい。
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