研究課題
基盤研究(C)
本研究は乳児院および児童養護施設に入所している児童が早期に、しかも安全に家庭復帰をはたすための支援プログラムを開発していくにあたり、その基礎的な資料を明示することを目的としている。そのため平成15年度前半は乳児院、児童養護施設においておこなわれている家族再統合支援のなかで、家族アセスメントや家族支援方法論の課題がどこにあるかを明確にするための調査をおこなった。方法は社会福祉法人慈愛会・清心乳児院において3年間実施された「早期家庭復帰支援事業」の対象とされた事例を中心にケース記録の分析と支援にたずさわった家庭支援専門相談員への聞き取り調査によっている。結果として措置時のアセスメントでケースのタイプが3つ((1)家族再統合が不可能なケース-遺棄・親の死亡等(2)家族再統合が容易なケース-親の一時的疾病等シンプルな措置理由(3)支援次第で家族再統合が可能になるケース-児童虐待・親の薬物使用等複雑な背景を有するケース)に類別できた。またファミリーソーシャルワーカー(家庭支援専門相談員)が主に対象とすべき家庭は(3)のタイプであり、支援としては(1)親のみの支援を中心に考えるケースと(2)親の原家族(祖父母世代)をワンセットで考えるケースで2つの方向性が示唆された。以上の結果は報告書「慈愛会児童福祉施設将来構想の取り組み-乳幼児ホームにおける家族再統合支援プログラム開発に関する基礎研究 第1報」において中間報告として掲載した。平成15年度後半以降はより具体的な支援の方向性を見いだすために、家庭復帰が実現したケースの親にたいしてインタビュー調査をおこない、家庭復帰が困難で児童養護施設に措置変更されたケースとの違いを明確にした。両者の違いは主に(1)子ども引き取ろうとする親の動機付けの強弱(2)子どもへの愛着の強弱(3)親族(祖父母や親の兄弟)の支援(4)ソーシャルサポート(社会資源等)の活用度などであった。また支援に関しては(1)子どもへの接触を維持する(2)親と祖父母世代の葛藤関係を調整する(3)社会資源を紹介するにとどまらずアクセスできるまで支援するなどの方法が有効であった。以上の結果をふまえ施設で家族再統合を支援する中心的役割になるファミリーソーシャルワーカーが必要とする、アセスメントの視点と具体的支援の方向性、さらに援助技術を『乳幼児ホームにおける家族再統合支援プログラム開発に関する基礎研究(最終報告書)』(2006)、および「家族再統合の課題としての世代間葛藤-施設ソーシャルワーカーがおこなう日常的家族療法」(2006)において公表した。
すべて 2006 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
アディクションと家族 22(4)
ページ: 373-380
乳幼児ホームにおける家族再統合支援プログラム開発に関する基礎的研究(最終報告書)
ページ: 1-80
Japanese Journal of Addiction & Family Vol22(4)
Research into Family Reunification Support Program for Infants Living in Residential Care Home(The Final Report)
「慈愛会児童福祉施設将来構想」の取り組み-乳幼児ホームにおける家族再統合支援プログラム開発に関する基礎研究 第1報
ページ: 47-68
How to Cope with the Future Problems in Jiaikai Child Welfare Institution - Research into Family Reunification Program for Infants Living in Residential Care Home : The 1^<st> Report