本研究課題は、瀬戸内海島しょ部地域の愛媛県越智郡弓削町、生名村、岩城村、関前村、魚島村の1町4村を研究対象としている。本年度は当該地域の全体像を把握するために、各町村の所在する弓削島、生名島、岩城島、魚島、岡村島の保健福祉行政関係者へのヒアリング、及び弓削町と関前村の現地調査を実施した。 これら1町4村は、「瀬戸内しまなみ海道」(西瀬戸自動車道)の交通路線から外れていることもあり、当該町村の交通手段は航路のみに依存している。弓削町、生名村、岩城村は因島市-今治市間の航路によって中国・四国地方と結ばれているが、関前村と魚島村はそれぞれ別の航路が設定されている。基幹産業の農業・柑橘栽培や漁業・養殖業の低迷から若者の流出が常態化しており、高齢化・人口減少が目立つ過疎、離島地域である。現地調査は、民生委員、老人クラブ役員、保健師を主な対象として弓削町と関前村において実施した。 弓削町は、広島県因島市との航路によって結ばれていることもあり、生活圏としては因島市との結びつきが強く、日常の買物や通勤、通院などは因島市を利用する場合が多い。基幹産業である柑橘類の農業は、従事者の高齢化と後継者難によって衰退傾向にあるが、町内には商船高専や高校があることから近隣町村からの通学者もおり、平成16年中に予定されている生名村、岩城村、魚島村との1町3村合併計画の中心地となる。関前村は、瀬戸内しまなみ海道の西方に位置しており、主に今治市との航路が住民生活を支えている。とくに高齢化率が全国2位に達しており、若者の流出や人口減少が著しい地域である。両地域の民生委員や老人クラブ役員、保健師、住民組織の役員あるいはボランティア団体の役員より、高齢者の地域生活の様子や在宅支援の実態について多くの情報を得ることができた。
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