15年度、16年度の研究をふまえ、17年度は下記の研究を行った。 齊籐は、わが国の対応困難事例に関する文献から対応困難となる要素を抽出した。そして、関東地方のA市における介護支援専門員30名に自由記述の調査を実施した。調査は、対応困難事例の有無、対応困難事例の内容、対応困難な事例に対する対応、対応困難事例発生の原因、割合、うまく言った事例についての回答を得た。その結果、9割以上のものが対応困難事例に直面しており、その割合は1〜2割程度と認識していること、対応困難事例には、援助者、利用者、介護者、地域のシステム、の4つが関連していることがわかった。先行研究では明らかにならなかった、対応困難事例の要素として援助者の要素が大きいことが明らかとなった。 渡部は、現在介護支援専門員が抱える悩みのトップである「困難ケース」に焦点をあて、それを介護支援専門員が果たす機能の面から分析を行い、わが国の介護支援専門員が困難ケースと呼ぶ事例に対してどのような役割を発揮しようとしているのか、その役割は適切に機能しているのか、また、利用者支援に必要でありながら発揮されていない役割は何なのか、を整理し、今後の課題を明らかにしていくための研究を行った。英文文献から困難事例、ソーシャルワーカーの役割、ケアマネジメントモデルについて先行研究レビューを行い、75事例の介護支援専門員の事例を質的に分析を行った。その結果、介護支援専門員の果たしている機能は社会質源仲介・動員機能をもっともよく使っていることが明らかとなった。しかし、この社会資源仲介・動員機能を適切に用いるためには、十分な情報収集・非調査者である介護支援専門員の30%強のみであった。さらに支持・助力機能も約30%強が実施しているに留まった。これらのことから、三割程度が、資源仲介の際に利用者と利用者の置かれている状況に対する十分な情報を収集し、その情報整理を基にしたアセスメントを行っているに過ぎないということが明らかとなった。また、利用者の力の引き出しは三割程度、社会史源開発や保護・代弁機能は見られなかった。このような機能、役割の限定がケースをより困難にしていると考えられた。
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