難病児親の会24団体の役員を対象にすでに実施した質的インタビューのデータを読み直し、また整理しなおすことにより、セルフヘルプグループの組織論的課題(特にフリーライダー問題)に対して、「非難」「弁護」「暴露」という3つめストーリーが流れていることを再確認した。そしてそのストーリーは調査研究者と調査参加者との関係によって変化することも確認した。また、親の会について難病関連の情報を会員に伝達する機能を重視した「情報発信基地」といラメタファーが使われていた。役員というリーダーについては「世話人」と表現され、その平等主義的な関係が強調されていた。男性役員のなかには親の会について「会社」との比較を多く用い、「会社ではない組織」というネガティブで曖昧な表現を使うものもいた。親の会の運営を担う責任については「貧乏くじ」「ゴミ捨て場の掃除」などというメタファーが使われていた。平成15年11月には、相談活動でのフリーライダー問題をめぐる難病児親の会の対応を3つの類型((1)情報を親の会への参加を促す動機付けに利用する、(2)相談の1対1の対応をネットワーク関係に転換する、(3)リーダー自身も難病児の親であることを強調する)に分けた論文を米国デンバー市で開かれた学会(Association for Research on Nonprofit Organizations and Voluntary Action)で発表した。そこでの議論によってメタファーは、それを表現する言語や使われる文化によって大きく内容が変わり、それだけ海外での研究成果発表については難しさが伴うことが明らかになった。
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