今回の研究課題では、祖父母と孫との間の人間関係に着目し、両者の関係が何らかの理由によって分断されたときに、その交流を支援するための制度および政策のあり方に関する研究を行なった。また、この研究の過程において、「ケアの担い手としての祖父母(a grandparent as a carer)」をめぐる諸問題が、新たな論点として浮上してきた。そこで、この問題についても取り上げることとした。制度政策の問題と関連づけて祖父母と孫の関係を検討する研究は、わが国においては未だ研究業績の蓄積に乏しい。そこで本研究課題では基礎的な調査や研究を行った。すなわち、まず個々の検討項目に関する各種文献・文書・資料等の収集と分析を行うこととした。その際、研究対象として取り上げた各国の現行制度や近年の政策動向の検討に加えて、制度や政策が立案されるに至った社会的背景や歴史的な沿革等についても検討項目に加えた。 研究期間の2年目となる平成16年度は、前年度に引き続き、研究対象とした各国における下記の諸点について分析と検討を行った。(1)現行法の基本構造と判例法理について。特に、離別した祖父母と孫との交流をめぐる法的枠組について。また、「祖父母の権利」および「子の福祉」の関係について。今年度は、当初計画した研究対象に加え、新たにカナダにおける動向を取り上げた。(2)政府の社会福祉政策および家族政策のあり方について。(3)祖父母と孫の問題に関する福祉的対応について。今年度は、研究の過程において新たに浮上した論点である、ケアの担い手としての祖父母を支援するための方策について、オーストラリアにおける動向を取り上げた。現在、これらを踏まえて今回の研究成果の取りまとめを行っており、順次、学術論文として公刊の予定である。
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