今回の研究課題では、祖父母と孫との間の人間関係に着目し、両者が何らかの理由により同居できなくなったときに、その交流を支援するための制度および政策のあり方に関する研究を行った。今回の報告書では、主に法的な観点から分析した内容を取りまとめた。 本報告書では初めに、祖父母と孫の交流を取り上げることの意義を説明した。また、わが国における祖父母と孫の面接交渉の問題に対する法的な対応を検討した。 次に、本稿の研究対象とした諸国、すなわち英国、アイルランド、カナダの動向を取り上げた。具体的には、これらの諸国における面接交渉に関する根拠法の構造、および、判例法理を分析した。 最後に、これらを踏まえて、わが国の今後の制度設計のあり方を考える際に検討すべき論点を提示した。すなわち、法的根拠の必要性、国際人権規範の家族条項を祖父母の権利の根拠とすることの可能性、面接交渉の規定の方法、「子の福祉」や「子の最善の利益」の概念、立証責任、の諸問題である。 なお、この研究の過程において、「ケアの担い手としての祖父母(a grandparent as a carer)」に関する問題が、新たな論点として浮上してきた。そこで、この問題にも取り組むこととしたが、報告書として取りまとめるには至らなかった。これについては、現在準備中の別稿にゆずるものとした。
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