1.要介護高齢者の終末期ケアマネジメント (1)質の高い在宅終末期ケアの4条件を検討した。その結果、i)本人・家族の意思表示がある、ii)在宅ケアを支える介護力やサポートがある。iii)医学的ケアが提供されている、iv)本人・家族の願いを実現するために利用できる資源を結びつけるケアマネジメント、とした。 (2)研究結果を参考にして、要介護者終末期ケアマネジメントの様式(フォーマット)を作成した。横軸は、終末期経過(導入期・前期・中期・後期・臨死期・死別期)に区分した。縦軸は、アセスメント、ケアマネジメントの視点(医療・看護・介護・ケアコーディネーション)、質の高い終末期ケアの4条件(意思表示・介護力やサポート・医療的ケア・希望の実現)とした。 (2)(1)で作成した様式に基づいて事例分析を行った 脳卒中と重症心不全の要介護高齢者の終末期ケアマネジメントを分析し、様式の修正を行った。 2.要介護高齢者の終末期ケアにおける日仏間の比較検討 (1)フランスにおける在宅入院について:在宅入院の対象者の80%は癌などの終末期ケア。実施主体は在宅入院連盟などの民間事業者が中心である。訪問看護師がコーディネータを兼ねている。訪問診療はあまりない(1〜2回/月)主なサービスは、i)化学療法、ii)疼痛緩和(モルヒネ投与と観察)、iii)栄養管理(中心静脈栄養)である。 (2)フランスにおける緩和ケアは、日本と同様にほとんどが病院併設型であり、独立型は少ない。緩和ケアチームによるサービスが原則である。デイケアセンターを併設しているが、その役割は、症状のコントロール、レスパイトケアが中心であり、日本のように入浴、食事や介護サービスの提供はなく、イギリスのように社会的孤立を解消するレクレーション、趣味活動や人的交流はあまりない。 (3)緩和ケア病棟:フランスで800床あるが、病床としては4000床使用(転用)可能。在院日数は30日、平均年齢は72歳、対象者は疾患による制限はなく、終末期と判断された人であるが、実際は入院患者の95%を癌末期が占める。 (4)終末期ケアに係わる人材育成:フランスでは医師への研修が充実している i)医師:フランス緩和ケア学会による緩和ケア認定医師、ii)看護師:特別な資格は求められていない。3年以上の臨床経験が最低条件である。ただし、院内研修がある。人柄ややる気を尊重する。iii)ボランティア:厳しい研修が課せられている。教育についてはNPOのボランティア団体に委託。 (4)緩和ケア病棟における役割:患者・家族の支援、緩和ケアに従事する専門職の人材育成、研究の3本柱である。
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