知的障害児とその家族が福祉サービスを選択することを困難にしている要因を探り、自己決定の支援システム構築について検討することを目的として、知的障害児とその家族の生活実態、生活支援サービスの理解、利用状況、利用にあたっての当事者の意思への配慮、生活の不安、要望などについて調査を行い、結果を分析した。調査は、郵送方式によるアンケート調査と、個別の聞き取り調査とした。 回答は、山口県を中心に、中国5県の社会福祉協議会および各県の「手をつなぐ育成会」のうち、調査の承諾を得られた岡山県、島根県、鳥取県の計4県で行った。調査の有効回答は388ケース、このうち聞き取り調査への回答を承諾したものは34ケースであった。 この調査の結果、次のようなことがわかった。 ・知的障害児とその家族が抱える生活ニーズは、主として障害をもつ子どもの成長・発達、主たる養育者の状態によって経年的に変化する。 ・知的障害児の主たる養育者は母親である。親は将来の生活と兄弟姉妹への負担について不安を感じている。 ・親が利用したい相談機関は、「子どもについて理解し、継続的に対応してくれるところ」である。児童の発達状況や親の悩みを理解してくれながら、助言・指導してくれることが、親にとって必要な子育て支援である。しかし、現状では、ケースの経年的な変化を、一環して把握している機関がない。地域の身近な相談機関では、保健センターがこうしたニーズにやや近い機能を持っている。 ・知的障害児とその家族のエンパワーメントを高め、本人と家族が適切にサービス利用の意志を表出し、適切な選択・決定を行なうことができるように、専門機関の連携と専門職員の配置が必要。
|