知的障害児とその家族の福祉サービス利用を困難にしている要因を探り、知的障害児とその家族本人の意思を反映させることのできる支援体制の構築を検討することを目的とした。 調査は山口県、島根県、鳥取県、岡山県の4県で、郵送によるアンケート調査と、アンケートの回答者に対する聞き取り調査を行った。 郵送によるアンケート調査の回答者は388名、聞き取り調査の回答者は36名となった。 アンケート調査の結果から、次のことがわかった。 ・知的障害児を養育するものは、主として母親である。母親は、子どもの要求を反映させてサービスを選んでいると考えている。 ・相談機関としては、子どもへの対応の仕方を教えてくれる医師や教員、保育士などである ・子どもの将来については、できるだけ親が養育し、介護が困難になったらグループホームを利用したいと考えている。 ・地域福祉権利擁護事業や成年後見制度など、障害児の人権保障にかかわる制度に対する解度は高くない。 聞き取り調査の結果は、次のようになっている。 ・乳幼児期には、子どもの障害について理解し、療育・訓練を受けるようになるまでの過程で、支援が必要である。 ・思春期には問題行動が多く発生し、親は心身ともに疲れている。緊急時のサービスの充実と子どもが余暇時間の活用の能力を身に付けていく必要がある。 ・重度のコミュニケーション障害のある場合には、親も子どもの対応に苦慮している。子どもと養育者の、それぞれの自立した生活のための支援が必要である。 障害児や家族のエンパワーメントを高め、サービス選択の支援システムを構築するためには、乳幼児期から就労期に至るまでの、継続的で、総合的な支援システムが必要である。
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