研究課題/領域番号 |
15530393
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研究機関 | 創造学園大学 |
研究代表者 |
大原 美知子 創造学園大学, ソーシャルワーク学部, 教授 (50360699)
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研究分担者 |
妹尾 栄一 財団法人東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 副参事研究員 (30226675)
今野 裕之 目白大学, 人間社会学部心理カウンセリング学科, 助教授 (70348316)
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キーワード | 母子生活支援施設 / 不適切な育児 / メンタルヘルス / 抑うつ傾向 / 愛着障害 / 解離傾向 |
研究概要 |
母子生活支援施設職員からのヒアリングをもとに質問紙を作成し、東京都内母子生活支援施設に入所中の母親を対象とし、自記式アンケート調査を行った。調査方法は調査に協力の得られた対象者のみ質問票を配布し、そのうち143件を回収した(回収率66.2%)。調査内容は(1)人口統計学的なデーター(2)ソーシャルサポート(3)抑うつ傾向(4)解離体験(5)パートナー及び実家との関係(6)子どもへの愛着(7)子どもへの不適切な育児項目などを用いた。 アンケート調査の結果、(1)就労はパート・アルバイトが多く、収入も200万円以下が約9割であった。(2)ソーシャルサポートは母子生活支援施設職員、友人・仲間が多く、家族や公的な支援者は少なかった。(3)パートナーから身体的暴力を受けていた人は67.1%に上り、施設入所理由の「夫などからの暴力44.9%」よりはるかに多かった。(4)56.5%の人が生育家族との葛藤性は有していた。(5)抑うつ傾向にある人は49%と、一般人口調査の13%と比較すると、母子生活支援施設入所者の抑うつ傾向の頻度が相当に高いことが判明した。 入所者の49%に見られた抑うつ傾向と、不適切な育児および子どもへの愛着障害とに関連が見られ、抑うつのある群は不適切な育児を行いやすく、子どもへの関心が薄いなど子どもの心身の成長に影響を及ぼしていることが予測された。またDV被害経験と抑うつとの関連については統計的な差は見られず、重回帰分析からも解離得点やサポートがないなどが抑うつの要因として選択されたことから、過去の被害経験より今現在の状況に影響されている可能性が見られた。これらのことから施設内でのメンタルヘルスへの介入とケアは、母親の子育てへの有力な支援となる可能性が示唆された。そのため入所者自身と協働してケアを行うことを可能にする、知識教育プログラムの開発などが今後求められる。
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