研究概要 |
平成15年度は理論的整理を試み、日米両国で予備調査を実施した。文化的自己観(Markus & Kitayama,1991)、はじめとして、文化差を理論化した先行研究を広く概観し、山本他(2002)、Yamamoto, Fiske & Okiebisu(2003)の実験結果を踏まえながら、一対一の対人関係のありように関する日米間のメタ期待の差異を、基本的動機、初対面の相手への反応、相互の反応の受けとめ方、期待される対人関係の特徴などについて、海外の共同研究者と協議、検討しながら理論化を試みた.特に、日米における一対一の対人関係のありように関する実態を、自由記述方と内容分析を用いて探索的に把握するための予備調査を実施し、回答結果について内容分析を行い、両国間の相違性を検討している。予備調査の内容については、海外の研究者と十分に協議し、その内容を決定した上で、日本の研究者が日本語の調査票を作成し、その後、back-translationの手続きを踏み、最終的に米国の研究者が、英語表現の自然さをチェックし、修正した。日本での予備調査の内容分析は日本人研究者が行ったが、アメリカでは、日本で整理されたカテゴリーをもとに、海外共同研究者が内容分析を実施した。なお。日本人の分析結果を見ると、初対面の他者へは、慎重で中立的な反応が示されやすいという当初の予測を支持する回答傾向が認められた。現在米国のデータは分析中である。 また、上記の初対面の他者に対する反応の特徴の把握の他に、日米における対人関係のメタ期待の特徴(独立的関係-ユニット関係)を測定する尺度の開発も試みた。日本側の研究者が、18項目からなる心理尺度の第1案を作成した。日本の被験者について回答を求め、その結果を因子分析したところ、ユニット関係を示す因子と独立的関係を示す2因子が抽出された。同一の尺度を英訳したものをアメリカ人の被験者にも回答させ、同様の因子が認められるか、その因子得点に、「日本人はユニット関係得点が高く、アメリカ人は独立的関係得点が高い」という当初より予測される傾向が確認されるかを、現在検討している。
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