本年度は、分析のための資料整理に研究の中心をおいた。第一に、大正時代以降の知能の民族間差異や民族好悪に関する心理学研究の文献整理を現在行っている。民族・人種に関する明治期以降の心理学研究については、すでに明治末期まで分析整理した。明治時代までの外国人に対する日本人の態度、人種ステレオタイプは、心理学研究に範囲を限定せず、資料を整理し分析し、一冊の資料集にまとめる作業をしているところである。大正時代に入ると、人種問題と同時に民族問題が中心的な位置を占めるようになり、日本人としてのアイデンティティを確立することが重要な課題であった。民族意識の効用の背景には、白人種・黄色人種・黒人種といった人種意識が強烈に意識されていたことは確実である。 第二に、幕末明治時代を中心に、日本の渡航し滞在した外国人が日本人について記述した著書・記録を整理し、分析し始めている。当時航海術、船は十分に発達していなく、海外との交流も断たれていたため、公式的に外国を訪れた人々はほとんどいなかった。しかし、難破・漂流し海外の地を踏んで帰国した人もまれであるがいた。彼らの目を通して外国人が日本人の目に如何に奇異に映っていたかを知ることができる。 第三に、現代のマイノリティに対する偏見と差別の心理を明らかにするために、障害者に対するイメージと態度に関する調査研究を準備している。質問紙を作成する作業を進めており、4月以降調査を実施する予定である。人種的ステレオタイプになんする実証的研究も継続的に進めている。絵本を材料にした実験を分析し、社会心理学会で報告する予定である。
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