研究概要 |
日常生活において遭遇する様々な生活リスク行動(多重債務,NEET,生活習慣病)が社会問題化している。生活リスクとは,一般的な人が営む生活ができなくなる危険性・可能性のことである。そのリスクは,怪我や病気などの身体的リスク,浪費や借金などの金銭的リスク,就労や結婚などの人生に関するリスクなどに分類することができる(e.g.,上市・楠見,1998a)。本研究では,これら社会問題化した個人的な生活リスクに関して,これら行動を規定する要因と対処行動を統一的に説明するためのモデルを提案することである。 方法 多重債務,NEET,生活習慣病の3つの状況に関して,質問紙調査をおこなった。調査対象者は大学生190名(男性117名,女性71名,不明2名)であった。質問冊子を2005年12月に配布回収した。質問項目は,意思決定スタイル,モラル・意識,情報接触,ベネフィット認知,コスト認知,リスク認知,後悔予期,態度,リスク行動などである。分析方法は,共分散構造分析法を用いた。 結果 3つの状況に共通するプロセス:ベネフィット認知→コスト認知→態度→現在の生活リスク行動→将来の生活リスク行動,多重債務とNEETに共通するプロセス:モラル・意識→リスク認知→後悔予期→現在の生活リスク行動→将来の生活リスク行動というプロセスが存在することがわかった。このことから,モラルや意識を高めることが生活リスク行動を適切な行動に変えるために必要であることが示唆された。
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