研究概要 |
本研究では、逸脱行動に影響を及ぼす要因を特定し、逸脱行動を適切な行動へ変化させるための方法について検討することである。調査については、逸脱行動を規定する要因について共分散構造分析法により検討した。実験については、どのような情報を提示することが逸脱行動を適切な方法に変化させるために有効かということについて検討した。その結果、1)逸脱行動(多重債務、NEET、不摂生による生活習慣病)は、ベネフィット認知やコスト認知(逸脱行動を避けるための労力)が態度(行動促進、行動抑制)を介し、逸脱行動を規定していること、および意思決定スタイル(熟慮して決めているかどうか)、リスク帰属(自分自身に責任を感じる程度)、モラル・意識がリスク認知や後悔予期(悪い結果が生じたときにどれくらい後悔を感じるか)を介して、逸脱行動に影響することがわかった。2)Five Factor Modelの外向性、調和性、誠実性などが高い人は、長期間の集団生活におけるストレスにうまく対処でき、不適切な行動(他人に八つ当たりする,合宿を放棄するなど)の行動をとらないことがわかった。3)不適切な行動を適切な行動へ変えるために必要なこととして、情報提示が重要であることが示された。大学生の喫煙に関しては、恐怖を喚起するパッケージ(カナダ)を提示した方が、あまり恐怖を喚起しないパッケージ(日本)よりも、「タバコはやめられる」という意識が高くなること、音楽CDの違法コピーに関しては、規範意識が高い人に違法コピーのできない音楽用CD(CCCD)に対するポジティブな情報を与えることにより、著作権に対する意識が高まるが、規範意識の低い人には効果がないことが示された。これらのことから、逸脱行動が生起する原因は、あまり熟慮せずに意思決定することや誤った認識をしているためと考えられる。よって逸脱行動を適切な行動へ変えるためには、個人差を考慮した上で、適切な情報を提示し,熟慮して意思決定するように促すことが重要であることがわかった。
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