本研究の成果の概要は以下のとおりである。 1)本研究は、国際比較調査に含まれる測定尺度の質問項目を利用して、i)テストの分析に用いられる項目応答理論を国際比較調査項目におけるDIFの検出に適用する可能性について、ii)適用するDIF検出法の違いが結果に及ぼす影響について、検討することを目的として実施した。 2)国際比較調査では質問項目の等価性に関しては「翻訳等価性(質問文が言語的に正しく翻訳されているか)」と「意味的等価性(文化的・社会的な文脈の中での等価性)」とが問題になるが、DIF分析は特に後者に関する検討を行なうための統計的方法である。 3)DIF検出法としては、パラメトリック法から、i)BILOG-MGのDIFコマンド、ii)Thissenの尤度比検定、ノンパラメトリック法から、iii)M-H統計量、iv)ロジスティック回帰、の4つの方法を適宜適用して検討を進めた。 4)調査データは、i)「日米ロースクール学生の法意識調査」から「法に関する観念尺度」項目、ii)日本・米国・中国における法意識全国標本調査から「国家機関信頼度」項目、iii)「22力国契約意識調査」から英語圏内での国間比較のために「F尺度」項目を用いた。 5)分析の結果、i)因子分析で一因子性の高い尺度項目で、翻訳等価性が程度確保できている項目についても、DIFがみられる場合がある、ii)標本数が大きいと有意になりやすいため、検定結果のみならず、内容的な検討が重要である、(例えば、「国家機関信頼度」の質問文に含まれる「公正」などの抽象語彙)、iii)複数のDIF検出法を併用してDIF項目の判断を下さなければならない、などが示された。 6)研究成果は、i)法と心理学会第5回大会(2004.10.16〜17)、ii)法と心理学会第6回大会(2005.10.15〜16.)、iii))University of British Columbiaにおける研究会(2006.3.5〜11.)において発表した。
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