研究概要 |
実験1では,男性実験参加者に対して実験を行った.独立変数として平等主義性役割観(高vs.低),脅威(死の顕現性)の有無,評定する女性の志向(家庭志向vs.キャリア志向)を設けた.従属変数としては,評定する女性に対する,「暖かさ」の次元と「有能さ」の次元の評価を測定した.結果として,伝統的性役割観が強い男性の場合には,死の顕現性が高まるという脅威があった場合に,家庭志向の女性に対しては,「暖かさ」の次元で評価を高くし,「有能さ」の次元での評価を低めた.また,キャリア志向の女性に対しては,「暖かさ」の次元で評価を低め,「有能さ」の次元での評価が高めた.一方,平等主義的性役割観が強い男性の場合には,脅威があった場合に,家庭志向の女性に対しては,「暖かさ」の次元でも「有能さ」の次元でも評価が高まる方向に変化していた.キャリア志向の女性に対しては,「暖かさ」の次元でも「有能さ」の次元でもほとんど変化がないものの,評価が高まる方向を示していた. 実験2では,女性実験参加者に対して同様の実験を行った.従属変数としては,評定する女性に対する「暖かさ」の次元と「有能さ」の次元の評価を測定したが,2次元に分かれず1次元として測定された.結果として,平等主義的性役割観の強い女性の場合には,死の顕現性が高まるという脅威があった場合に,家庭志向の女性に対する評価を低め,キャリア志向女性へ評価を高めていた. これらの結果は,脅威があることにより,その状況において利用可能な規範的ステレオタイプの適用が促進されることを示すものであった.
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