説得的メッセージに対する自動的反応について、4つの実験を行った。15年に行った実験1では、メッセージ提示の基礎的研究として、命題文をあらかじめ一度提示しておくことが、その命題で述べている内容の真実度の認識を高めるか検討を行った。その結果、一度提示された実験参加者においては、より命題が正しいと認知する傾向が見られた。16年に行った実験2では、記憶がメッセージから受ける説得にいかに影響するかを検討した。説得的メッセージをあらかじめ一度提示し、2週間後に新しいメッセージと混ぜて旧メッセージを提示し、再認テストを課した。その結果、多面的思考傾向の低い実験参加者では、誤再認-フォールス・メモリーがより多く、また、フォールス・メモリーを多く示した者ほど、メッセージ内容に説得される効果が示された。実験3では、画像処理により作成された広告画像を用いて自動的処理と意識的処理の効果を検討した。実験室にある大画面(32インチプラズマTV)で提示されている映像に偶然接する自動的処理群では、イメージ的な訴求広告が効果的で、広告を評定することを目的にして映像を視聴する意識的処理群では、商品の機能を説明する論理的訴求が有効であった。メッセージ内容と処理スタイルが交互作用的な効果を持つことが示された。 実験4では、メッセージの提示スタイルと受け手の感情との一致によって自動的に説得力が高まるか検討した。説得テーマのよい点を推奨するポジティブ・フレーミングでは、受け手の感情がポジティブな際により説得効果を発揮し、禁止的なメッセージを含むネガティブ・フレーミングでは、感情群問で差が見られなかった。おおむね受け手の感情とフレーミングが交互作用的な効果を有することが示された。実験2の成果は、17年1月アメリカで開催されたSociety for Personality and Social Psychology第6回大会にて発表し、実験3の成果は、17年3月に神戸で開催された日本グループ・ダイナミックス学会第52回大会にて発表を行った。自動性の研究成果を、岡隆(編)「社会的認知研究のパースペクティブ」に執筆し、実験提示の技術的問題を「パーソナル・コンピュータによる心理学実験入門」に編集、執筆した。
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