研究概要 |
姿勢維持は平衡感覚、視覚、体性感覚の統合によって行われている。Wada Sunaga, Nagai (2001)は、不安が重心動揺における前後方向軸の周波数成分に影響すること、また閉眼時にはその影響が無くなることから、視覚情報が大きく影響することをすでに明らかにした。そこで今年度は、不安の変化と姿勢維持に関わる関係について基礎的な検討を行い、次年度以降の基礎的資料を構築する。 20名(男2名、女18名)の健康な大学生(19歳から33歳)が実験に参加することに同意した。重心動揺は、白色背景に目の高さに調整した直径17cmの黒色ターゲットをみながら両足を平行に立ち、開眼と閉眼各1分間測定された。状態不安の時間的変化量と重心動揺の変化との関係を検討するために各自1ヶ月の間隔で繰り返し測定した。繰り返し測定されたデータを最終的に統計解析した結果、重心動揺の総動揺面積、前後方向での最長動揺距離と、状態不安の変化に有意な正の相関関係が認められた。この相関関係は開眼時のみ認められ、閉眼時では消失した。 本年度の結果は、Wada, et al. (2001)の結果を確認すると同時に、状態不安の変動が視覚情報処理を介して姿勢維持に正相関することを明らかにし、姿勢維持の要因として不安変動を組み入れることが有効であることを明らかにした。つまり本結果から次年度以降の研究に際して、対人場面での不安要因を検討する基礎データが得られたことになり、次年度以降、不安の制御を指標にして感覚のモダリティーを検討することの有効性が確証された。
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