研究課題/領域番号 |
15530409
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
小玉 美意子 武蔵大学, 社会学部, 教授 (10231482)
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研究分担者 |
白水 繁彦 武蔵大学, 社会学部, 教授 (10162778)
吉田 文彦 東海大学, 文学部, 教授 (60210720)
小田原 敏 武蔵大学, 社会学部, 教授 (60268323)
音 好宏 上智大学, 文学部, 助教授 (60266062)
鈴木 弘貴 十文字学園大学, 社会情報学部, 助教授 (40337639)
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キーワード | 9.11 / 同時多発テロ / ジャーナリズム / ニュース / 情報行動 |
研究概要 |
本年度は従来の研究対象国である日本(NHKニュース7)とアメリカ(CBS CBS Evening News with Dan Rather)に加えて、イギリス(BBC Six Oclok News)とブラジル(Globo Jornal Nacional)が新たに加わった。なお、本研究で取り上げた四つのニュース番組は、それぞれの国において、一般的な支持を得ているとともに、文化的・社会的な意味において代表制をもつ番組であると考え、比較検討することにした。 インタビュー調査は、原則としてその局のニュース責任者、編集者など、責任をもってニュースを送り出している人たちに、ニュースに対して持っているジャーナリストとしての意識と、その局の方針、そして、現状のニュース認識とを聞いたところ以下の知見が得られた。 ほとんどの編集者が近年起こった変化の背景として意識していたのは「9.11事件」と「技術的進歩」である。後者の「技術的進歩」は二つある。これらの発展を背景として、テレビニュースの具体的な変化は、主として情報源の多様化と取材方法の多様化である。両者は相互に関連をもちながらこの時代のニュース取材の特徴であることがわかった。 しかし情報源の多様化といっても、言論・表現の自由が浸透していると思われた数年前のアメリカであっても、戦時には自民族中心の発想になる状況は避けがたいことを「9.11事件」後の報道は示唆した。その意味でも、同事件以後のアメリカのメディアのあり方を、単に批判の対象とするだけでなく、「いつか他でも起こり得る問題」として客観的に検討し、考察を加え、同じような状態を再度生じさせないような工夫をすることが重要である。情報源の多様化の中のもう一つの示唆は、世界各地域の放送局が作るニュースの相互利用は、別の角度から見ると、ニュースの多国間相互利用でもある。それは同時に自国のニュースが国際化することを余儀なくされていることも示している。 以上のことから、今日のテレビニュースが自国でも、世界でも通用するメディアであるための条件が浮かび上がってくる。それは普遍性である。題材はローカルであっても、視点はユニバーサルであるニュースを志向することが、社会的に意義があると共に、ニュースの市場性を高めることになると考えられる。それには当該ニュース組織が、はっきりとそのようなジャーナリズム理念を打ち出し、それをガイドラインや理念で示すと同時に、それを実現するための積極的な方策を取ることが必要である。その具体的な指針の一つとして、「BBC番組制作のガイドライン:BBCの価値と基準」「BBCの編集価値」を見出すことができる。また、その他の積極的な方策の一つとしてニュースルーム構成員の多様化であるということが明らかとなった。
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