本研究は、「公正理論に基づいた動機づけプロセスにおける対人コミュニケーションの機能をあきらかにする」ことが研究目的であり、それに関しての日・米異文化比較をすることをめざすものである。本年度は、このうち、文献調査、仮説構築、質問票の作成、そして、質問表配布の依頼、までが目標であった。文献調査に関しては、組織公正理論のうち、分配的公正理論(distributive justice theory)と手続き的公正理論(procedural justice theory)、特に、相互作用的公正理論=interactional justice theory)の理論的発展を試みた。相互作用的公正理論では、コミュニケーション変数として、被意思決定者への発言機会の提供、意思決定に関する十分な説明、そして、被意思決定者に対する情報伝連時の適正態度が、意思決定の内容に対する被意思決定者の公正感に影響を与えるということが発見・報告されてきた。本研究者は、文献調査を通じて、新たなコミュニケーション変数を抽出した。具体的には、影響戦術(influence tactics)という社会心理学理論の知見から、操作的定義によって「合理性コミュニケーション」、「権威的コミュニケーション」、「友好的コミュニケーション」という3つのコミュニケーション変数を新たに提示するにいたった。そして、先の相互作用的公正理論から提示されてきた3つのコミュニケーション変数とこの新たな3つコミュニケーション変数が組織公正感と動機づけの関係の媒介変数でありうるか否かに関する仮説を構築した。その仮説には、文化的価値観と欲求の関係の影響も含まれている。まだ修正の余地はあるが、2年目の実証研究にむけての理論の部分の準備はほぼできた。この仮説を検証するための質問票も英語版を完成し、予定通り2月下旬〜3月上旬にかけての渡米で質問票配布依頼も行った。
|