研究課題/領域番号 |
15530414
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研究機関 | 甲子園大学 |
研究代表者 |
金川 智恵 甲子園大学, 人間文化学部, 教授 (70194884)
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研究分担者 |
坂田 桐子 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00235152)
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キーワード | 社会変動 / 自己概念 / 自己概念の安定性 / 自己概念の変容性 / gender identity / 東欧文化圏 / 状況即応的自己概念 / 質的データ分析 |
研究概要 |
本研究の目的は、自己概念の安定性・変容性に及ぼす社会変動の影響を、以下の3点を中心に検討することである。 1)自己概念の形成過程に関与する社会・環境的要因に関し、文化の影響に加え、社会変動の影響を検討する。この目的のため、社会体制・社会システムが大きく変化した東欧圏(主としてポーランド)を検討対象とする。 2)自己概念の安定性・変容性の問題を、「自己(self)は、能動的発動者であると同時に、社会環境の産物である」という、自己のパラドキシカルな基本特性を、社会変動との関連で検討する。 3)以上の問題を、自己概念の中心的側面の一つである、gender identityについても検討する。 上記の目的を達成するために、平成16年度は以下を実施した。 (1)15・16年度においてポーランドで収集した社会的変動関連の資料に基づいて、社会的変動の測定指標を試作的に作成した。 (2)16年度に開発した、ポーランドにおける聞き取り調査の分析を効果的に実施するための、質的データの入力及び分析に関するプログラムについて、その改良を行った。 (3)ポーランドにおける聞き取り調査実施に関し16年度に実施した、調査対象者の選定、調査依頼に必要な諸手続等の調査を継続し、調査対象者の拡大を図った。 (4)自己概念の柔軟性と社会的環境への対処方法との関連について、まず日本おいて本調査の1回目を実施した。 今回は、自己概念の柔軟性の測定を、状況変化への対応を直接問う形式の測度を使用した。また従属変数としては、葛藤場面でのcoping behavior、自尊感情、精神的健康度を測定した。その結果、 (1)状況変化への柔軟さの低い人は、葛藤場面で問題から逃避したり、解決行動を放棄したりする傾向が強く、対照的に積極的な解決行動とは負の相関があることが見出された。 (2)このようなcoping行動を反映して、状況変化への柔軟性が低くなるほど、自尊感情は低く、また精神的健康度も低くなる傾向が認められた。 (3)この結果から、状況への柔軟な認知的対応が社会状況などの変動への適応に関連していることが示唆された。 (5)以上の結果から、状況変化に即応した自己概念の柔軟な変容の、社会適応における重要性が示唆されたので、これに基づき、自己概念と社会変動の関係性についての理論的モデルの検討を行った。
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