(1)大学生生を対象とする模擬授業を実施した。 T大学学生6名を学習者、研究代表者を教授者として約1時間の模擬授業を行った。その様子をビデオに記録した。また、事後に参加者の感想を聴取した。このことにより、中学校・高校レベルの数学における文字式使用の前提となる基本的な原理を、大学生でもしばしば踏み外す可能性があること、また、この可能性を減じるための補習的支援策として、具体的事物の数量と文字との対応づけを行わせることが有効らしいとの示唆を得た。 (2)中学校段階での文字式学習のための導入問題を試作した。 文字式学習に際しての、教科書等での「例題」「演習問題」以前の導入的な教材として、具体物の個数と文字との対応関係を理解させるためのいわば"導入問題"を試作した。この問題は、単に正答するというよりは、その答の理由を意識することにより、妥当な文字式使用へと導くことを想定するものである。むろん、その有効性は今後の実証的検討に委ねられねばならない。 (3)高校生を対象とした実験を実施した。 上記(2)で言及した導入的な教材の有効性を探るため、公立の某高校の1年生約120名を対象に実験を行った(平成17年3月中旬)。そこから得られる結果(現在、分析中)を、平成16年度中の研究成果として明らかになった高校生・大学生の文字式運用上の誤りの原因についての分析結果に加えて考察することにより、本研究課題全体の成果としてのとしての一定の知見を得られるものと考えている。 なお、本研究課題でのこれまでの成果についての評価と今後の発展の方向性について、関連する領域を専門とする千葉大学、山梨大学、玉川大学の研究者と意見を交換し有益な示唆を得ることができた。
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