通常の単純な課題すら出来ない子どもたちは、気づかれやすいし、それなりの注意を払われることにもなる。また、一握りの「本当に出来る子どもたち」は問題ない。しかし、中間学力層の子どもたちは、「一見出来ているように見える」のである。しかし、その学力は非常に「脆弱」なもので、この層の学力の実態と問題点を明らかにするのが本年度の目的であった。 小学校低学年では和差の文章題、中高学年では小数などの各種計算問題、高学年では割合・倍の課題を用いて学力の実態を調べた。その結果は、予想を上回って顕著なものであった。 横軸に課題の難易度をとり、正答率順に左から課題を並べる。右へ行くほど難易度が高くなるわけである。課題の難易にもよるが、総じて全体の平均は、緩やかな右下がりの曲線を描く。 子どもたちを、上位1/4、中位1/2、下位1/4にグループ分けをすると、著しい特徴が見られる。上位はあまり右下がりにならない。下位のグループは左端の易しい課題である程度の成績を示すが、総じて底を這う形の正答率を示す。全体でみると緩やかな右下がりになるのであるが、中位の学力層ではこの右下がりの傾向が著しい。端的に言うと、このグループは、易しい部分の課題では、上位と違わない成績を示し、難しい課題では、下位グループと異ならない成績を示すのである。典型的で易しい課題で見るかぎり彼らは「出来るように見える」のであるが、課題が少し困難になると惨憺たる結果である。中間層の学力がいかに「脆弱」なものであるかの実態を明確に示せたと思う。このような状態を生み出す原因とそれへの対策が次年度の課題である。
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