通常の単純な課題すら出来ない子どもたちは、気づかれやすいし、それなりの注意を払われることにもなる。また、一握りの「本当に出来る子どもたち」は問題ない。しかし、中間学力層の子どもたちは、「一見出来ているように見える」のである。 小学校低学年では和差の文章題、中高学年では小数などの各種計算問題、高学年では割合・倍の課題を用いて学力の実態を調べた。その結果は、予想を上回って顕著なものであった。 子どもたちを、上位、中位、下位にグループ分けをすると、著しい特徴が見られる。上位はあまり右下がりにならない。下位のグループは左端の易しい課題である程度の成績を示すが、総じて底を這う形の正答率を示す。全体でみると緩やかな右下がりになるのであるが、中位の学力層ではこの右下がりの傾向が著しい。端的に言うと、このグループは、易しい部分の課題では、上位と違わない成績を示し、難しい課題では、下位グループと異ならない成績を示すのである。典型的で易しい課題で見るかぎり彼らは「出来るように見える」のであるが、課題が少し困難になると惨憺たる結果である。本年度はより精緻な結果を示すことができた。 また、刈谷他による大阪と関東における現行学習指導要領実施前後を比較した調査課題がある。これらのデータは社会階層的に解釈されているのであるが、本研究のような観点から再解釈を試みた。その結果、易しい課題では学力低下の程度が小さく、比較的難しい課題では低下の幅が大きいという明瞭な結果を得ることができた。中間層の学力の実態と問題点を明らかにし、学力が「脆弱」であるという学力低下の内実を明確に示すことができた。
|