本研究は、大学教員の異文化間トレランスの発現の様相や程度に影響を及ぼすさまざまな要因及び要因間の複合的関係を日米で比較検討し、教員の異文化受容のための資質や能力、態度の普遍性と、環境要因の相違による異文化間トレランスの発現の特殊性を明らかにするものである。 平成15年度は、留学生を受け入れた経験のある日本の大学教員を対象にDepth Interviewの手法を用いた個別面接調査を行った。個別面接では、留学生との間で生じる異文化状況での行動様式、価値観の相違、意思疎通の困難、摩擦、トラブルなどストレスフルな状況の経験の有無、ストレスイベントの強度、ストレスの程度、ストレス感受性、ストレス状況への認知、対処方略、パーソナリティ、コミットメント、信念、異文化への興味・関心など、個人内特性、対人関係要因、認知評価に基づくコーピングのあり方、社会環境要因を中心に聞き取りを行った。面接調査の結果をもとに、まず異文化葛藤状況での教員の心理的プロセスを分析し、異文化間トレランスの発現の様相や程度に影響を及ぼすと思われるさまざまな要因および要因間の複合的関係を考察した。次に因果関係を分析する上での構成概念の妥当性を検討し、日本の大学教員の異文化間トレランスの因果関係のモデルの作成を試みた。 また、16年度のアメリカでの現地調査に先立ち、アメリカの大学を訪問し、アメリカの大学に在籍する外国人留学生を対象に、教員との間で生じた対人葛藤の状況、状況に影響を及ぼす要因についてのパイロットデータを収集した。
|