本研究は、大学教員の異文化間トレランスの発現の様相や程度に影響を及ぼすさまざまな要因及び要因間の複合的関係を日米で比較検討し、教員の異文化受容のための資質や能力、態度の普遍性と、環境要因の相違による異文化間トレランスの発現の特殊性を明らかにするものである。 平成17年度ははじめに(1)アメリカにおける大学教員の個別面接調査を継続した。 個別面接は年齢、性別、宗教、教育歴、教育経験年数、マイノリティ受け入れの経験といったデモグラフィック要因、現在、過去の異文化接触の内容と量、異文化体験場面でのストレスコーピングのあり方、異文化に対する興味・関心、知識の量、ネガティブ・イメージ、信念といった異文化に対する姿勢などの観点から聞き取りを行なった。(2)異文化葛藤状況での教員の心理的プロセスを分析し、異文化間トレランスの発現の様相や程度に影響を及ぼすと思われるさまざまな要因および要因間の複合的関係を考察した。 次に異文化間トレランスの発現の普遍性と特殊性を日米教員で比較するため、(1)多民族、移民国家のアメリカと国民国家的日本の歴史的、社会的コンテクストの相違を明らかにし、(2)異文化間トレランスを身につける要因および異文化の存在を受容し、寛容さが生まれる要因について、内なる異文化に対する見方、感じ方、態度、過去、現在の異文化間の関係性、異文化間の意思疎通や関係構築に関する実際的な対人能力および対処能力などによって相乗的に変化するトレランスの様相を考察した。
|