研究課題
仮想的有能感を抱く人たちの仮想場面での怒りや悲しみの感情生起に関して昨年度に検討したが、今年度は主に彼らが現実に日常生活においてどのような感情を抱くかを明らかにすることを主眼とした。日常場面での感情を調べる方法として経験標本法(ESM)を用いた。具体的にはこれは、実験者側から毎日午前8時から午後12時までの間にランダムに5回、実験参加者のメールに信号を流し、その都度、実験参加者は所持している感情日誌的なものに自由記述や評定を行うものである。中心的には怒りや悲しみがどのような場面でどのような頻度で仮想的有能感との関連で生起しているのかをみることが目的であるが、他の感情、喜びや不安や恐れといったものとの関連についても検討が可能である。これを11月に1週間行った。この実験に参加した人数は100名であり膨大なデータが収集された。そして1月末までにデータ入力を行ったが、まだ分析は試みていない。本年度は他にも仮想的有能感の尺度の妥当性をみる実験を行った。仮想的有能感は直接的には他者軽視傾向の強さを測定しているので、他者軽視をすることでほんとうにそれが有能感に繋がるのかを明らかにしようとした。仮想的有能感の尺度項目の文章を分解したものを提示し正しい順序に並び替える群を実験群、何もしない群を統制群として、その後で有能感を測定するための質問紙とTATを実施した。両群とも自尊感情の高さは等しい。この結果もまだ分析途上であるが、実験群は統制群に比べて有能感が高い項目がいくつか見いだされた。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
Asia Pacific Education Review Vol5,No2
ページ: 127-135