本年度は主に年齢と仮想的有能感、年齢と怒りおよび悲しみの感情、仮想的有能感と怒りおよび悲しみの感情の関連について検討した。また、仮想的有能感の高低と自尊感情の高低を組み合わせた有能感タイプ(全能型、仮想型、自尊型、萎縮型)との関連もみた。 対象は中学生362名、高校生658名、大学生407名、25-34歳191名、35-44歳365名、45-54歳273名、55-64歳198名であった。感情は負の個人的出来事と社会的出来事の2つの場合に分けて尋ねた。 結果として仮想的有能感と年齢の関係はU字型で、中・高校生で高く、30-40歳代で低く、55-64歳で再び高くなった。有能感タイプでいえば、仮想型は年齢の上昇とともに減少し、逆に全能型は学生時代を過ぎると一気に上昇していた。また自尊型は大人で高いが55-64歳ではやや低下した。萎縮型は高校生あたりが最も高く、その後単調減少した。感情との関係では個人的出来事については中学生では怒りが高く悲しみが少なかった。また、社会的出来事では中学生や高校生で怒りも悲しみも感じない無反応が多く、大人では怒りや悲しみを感じることが多かった。すなわち、若者は自分の損得に関係する負の個人的出来事には怒りで反応しやすいが、直接関係しない社会的出来事には共感性が乏しいため何も感じないのである。この傾向に仮想的有能感が介在していると考えられる。
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