研究課題
基盤研究(C)
本研究は他者軽視に基づく仮想的有能感(他人を勝手に見下すことで感じられる根拠のない自己肯定感)が怒りと悲しみの感情にどのように影響を与えるのかについて検討したものである。まず、仮想的有能感を測定するための尺度作成が行われ、その信頼性や妥当性についての検討を行った。自尊感情が過去の成功・失敗経験に規定される概念であるのに対して仮想的有能感はほとんど影響を受けるものでないこと、そして、仮想的有能感と自尊感情の間にはほとんど関係がないことも明らかにされた。そこで、2つの尺度得点の高低で有能感の4つのタイプ、全能型(仮想的有能感高、自尊感情高)、仮想型(高、低)、自尊型(低、高)、萎縮型(低、低)が構成できることを提案した。感情については、1つは質問紙により個人的出来事、社会的出来事の仮想場面を提示してその時喚起されると予想される怒り-悲しみの感情の相対的強さを評定させた。その結果、仮想的有能感の高い人たちは個人的出来事に対しては怒りやすいが、社会的出来事に対しては怒りも悲しみも感じにくいことが示唆された。もう1つは日常的な感情生起をリアルタイムで自己記録していく経験抽出法(1日5回を1週間)によりアプローチした。そこでは怒りと悲しみだけでなく多様な感情について検討した。その結果、自尊型は仮想型や萎縮型に比べて概してより肯定的な感情を抱くことが明らかにされた。他に、年齢と有能感タイプおよび感情との関係などについても検討した。仮想的有能感は若者で高いが、いったん低くなり、また50〜60代あたりでも高くなること、しかし、そのうち自尊感情の低い仮想型は若者に圧倒的に多いことが示された。また、若者は大人に比べて個人的出来事に対して怒りやすいことも明らかにされた。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
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Asia Pacific Education Review Vol.15