研究概要 |
研究協力者の養護学校小学部および中学部教諭各1名と協議し,使用する手話語彙の検討を行った。対象児は,本学発達相談に来所の5歳男児(自閉症,発語なし),養護学校小学部在籍の10歳男児(知的障害,脳性マヒ,有意味語なし),養護学校中学部在籍の自閉症児4名(13歳男児:発語なし,14歳男児:ほとんど発語なし,15歳男児:10ほどの単語を発語,14歳女児:発語なし)の計5名であり,いずれも言語発達障害を有する。手話の指導形態は,5歳児についてはプレイルームでの自由遊び場面で,手話に熟達した学生スタッフが同時法的かかわりを行った。小学部児童では,言語指導の時間において,担当教諭が1対1の同時法的かかわりを行った。また中学部生徒では,作業の時間(2児),国語の時間(1児),日常生活指導の時間(1児)に担当教諭が同時法的指導を行った。これらの対象児はそれぞれ発達課題も相違しており,また手話の獲得に効果的な指導場面の選定を重視させたため,実験室的な要因の統制は行わず,むしろ個々の対象児にとって最適な指導場面の選択を心がけた。 おおむね週1回1時間弱,約6ヶ月間の指導の結果は次の通りである。すなわち,5歳児については,数個の家庭内で用いられる身振りのほかに,新たにスタッフの教えた「パン」の手話を模倣するようになった。養護学校小学部児童については,研究開始前から習得していた手話に比して新たな手話語彙の獲得は少なかったものの,5個の手話を模倣,1個の手話を自発できるようになった。中学部生徒については,一般に身体の一部に触れる形態の手話は獲得されるが,身体から離れ,または始点終点が明確でない手話の獲得はなされない傾向にあった。これらの結果は後続の研究計画に活用していく方針である。
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