研究概要 |
<研究I> 他者への深い関心と積極的関与を示す「ケア」の視点から成人期の発達をとらえ直し、成人としての発達にとっての「ケア」の意味と位置づけについて考察した。先行研究および岡本による成人期のアイデンティティ発達に関する一連の実証的研究(岡本,1985,1994,1997,1999,2002)の再考により、「アイデンティティとケアの循環的発達モデル」が提出された。つまり、青年期に確立されたアイデンティティは、成人期のライフプロセスの中で、「他(者)への投企」→「ケア[他(者)への深い関心と積極的関与]」→「積極的関与したものの成長・達成(=Generativityの達成)」→「アイデンティティの強化・成熟」→「さらなる他(者)への投企」という循環を経験しながら発達していくことが示唆された。 <研究II> 中年期のアイデンティティ様態の特徴を、「個としてのアイデンティティ」「関係性にもとづくアイデンティティ」の2つの軸、および職業を中心とする公的領域、家庭生活を中心とする私的領域の2つの領域におけるそれぞれの達成度の視点から分析した。中年男女240名に、EPSI(エリクソン心理社会的段階目録検査)、積極的関与の領域と程度に関するSCT(文章完成法テスト)を実施した。その結果、I統合型、II個の達成型、IIIケア型、IV職業関与型、V家庭関与型、VI未熟型の6類型が見出された。上記のいずれの領域にも積極的関与とアイデンティティ達成の高さを示したI統合型が、中年期の成熟したアイデンティティ様態であることが示唆された。
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