<研究1> 「重要な他者との関係性」の発達・成熟と「個としてのアイデンティティ」発達の関連性を分析した。中年期男女27名を対象に半構造化面接を行い、ライフサイクルを通した重要な他者との関係の中で構築される関係性を分析した。その結果、関係性様態として、再体制化完了型、現状満足型、否認・軽視型の3タイプが見出された。様態別にプロセス分析を行ったところ、3タイプ間でプロセスの達成レベルの相違が認められた。高い発達レベルの関係性様態(再体制化完了型)を獲得するには、重要な他者との関係の中で自分自身のあり方を問い直すという、「他者との関係性の主体的位置づけ」が重要であることが示された。また、再体制化完了型は、「個としてのアイデンティティ」の達成度も高く、両者の関連も示唆された。 <研究2> 「個としてのアイデンティティ」と「関係性に基づくアイデンティティ」の発達レベル、および両者のバランスから見たアイデンティティ様態を類型化し、これを測定する質問紙を作成した。これは、Erikson(1950)および、Franz&White(1985)の理論をもとに、「個としてのアイデンティティ」と「関係性に基づくアイデンティティ」の2つの軸について、I-VIII段階各々5-8項目からなる質問紙である。来年度、尺度構成法の手続きに従って、「個と関係性アイデンティティ尺度」として完成させ、青年期および中年期の対象者に実施し、ライフステージおよび男女の相違を検討する予定である。
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