研究概要 |
<研究1> 成人期のアイデンティティの発達を「個」と「関係性」からとらえる理論的枠組みとして、岡本の先行研究(岡本,1994,1997,1999,2002)を再考し、「成人期におけるアイデンティティとケアの循環的発達モデル」を提出した。 <研究2> アイデンティティの発達を、「個」と「関係性」の2軸から測定する尺度を作成した。尺度構成の手法により、12項目からなる「個」尺度、24項目からなる「関係性」尺度が作成された。 <研究3> 成人期における「重要な他者との関係性」の3つの様態(再体制化型、現状満足型、否認・軽視型)に見られるアイデンティティ発達の特徴を検討した。再体制化完了型は、他の型に比べて個体発達分化の図式(Epigenetic Schema, Erikson,1950)のほとんどのステージ(基本的信頼感、自律性、勤勉性、アイデンティティ、親密性、世代性、統合性)において有意に高い得点を示した。「関係性」の成熟は、「個としてのアイデンティティ」発達に強い関連性を有することが示唆された。 <研究4> 成熟した「関係性」の具現であるケアすることが、「個」の発達に及ぼす影響を検討した。家族をがんで亡くした方々を対象に、看取りの経験による人格的発達を分析したところ、「自己感覚の拡大」「死の恐怖の克服」「死への関心・死の意味の認識」などの特質が獲得されたこと、またこれらの発達的特質を獲得するまでの心理的プロセスが明らかにされた。
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