研究概要 |
本研究では、小学校3,4,5年生の9学級の児童を対象として7セッション(1セッションそれぞれ45分)の学級を単位とした集団社会的スキル訓練(以下集団SSTと呼ぶ)が実施された。集団SSTの効果を査定するために、訓練前と訓練後に児童用社会的スキル尺度(自己報告用と教師報用)、対人的自己効力感尺度、問題行動評定尺度がそれぞれの学級ごとに行なわれた。 学級を1つの単位とした集団SSTは各学級の担任教師によって実施された。担任教師はまず最初に社会的スキルの意義や大切さについて教示し、それに引き続いて、上手に聞くスキル,上手な断り方,共感の仕方,対人的な問題解決の仕方などの社会的スキルを標的スキルとした授業を実施した。訓練は,コーチング法の手続きで行われ,教示,問題場面の提示,モデリング,行動リハーサル,修正フィードバック,社会的強化から構成された。 訓練の結果は以下のとおりであった。 【1】児童自身による社会的スキル評定によると、訓練に参加した児童は社会的スキル総得点、仲間強化、社会的働きかけ、主張性のそれぞれのスキルが訓練後に有意に増加した。 【2】教師による社会的スキル評定では、社会的スキル総得点、社会的働きかけ、学業、自己コントロール、主張性、規律性の各スキルが訓練前から訓練後にかけて有意に増加した。 【3】教師による問題行動得点は、外面化問題行動得点と内面化問題行動得点の両方で訓練後に有意な減少をみた。 【4】児童による対人的自己効力得点は、訓練前から訓練後に有意に増加した。 本研究の集団SSTは、参加した3年生から5年生のほとんどの学級で訓練効果が認められた。これまで単発に1学級を用いて実証されてきた集団SSTの効果が、複数の学級で訓練効果が確認されたことにより、集団SSTの効果がさらに一般化されたといえるであろう。
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