研究概要 |
本研究では、2年間にわたって集団SSTを経験した小学校5年生〜6年生の児童が、社会的スキルの習得及び対人的自己効力感、ソーシャルサポート知覚をどの程度促進させるかについて分析した。また集団SST開始時(2年前)に社会的スキルのレベルが同学年の児童よりも1SD以上低かった児童が、2年間の集団SSTを経験することによってどの程度社会的スキルを向上させるかについても分析することにした。 対象児童は,2年間にわたって,1セッション7時間(1セッション45分の授業)と異年齢児童の交流セッション3時間からなる集団SSTを実施を受けた。集団SSTは,社会的スキルの意義や大切さ、上手な聞き方、共感の仕方等、児童にとって必要と考えられる社会的スキルを、教示、問題場面の提示、モデリング、行動リハーサルと修正フィードバック、社会的強化からなるプログラムに沿って担任教師によって実施された。 2年間にわたる集団SSTの実践によって、以下のような結果が見出された。 1、訓練に参加した児童の社会的スキル得点は,訓練期間を通じて増加しつづけ,訓練終了後6ヶ月を経て査定された訓練効果の維持も確認された。特に,集団SSTによって有意な社会的スキルの促進が認められたのは,仲間強化スキル,主張性スキル,及び社会的働きかけスキルであり,いずれも訓練の標的としてきた社会的スキルであった。 2、集団SSTによる社会的スキルの促進によって、対人的自己効力感とソーシャルサポート知覚(教師・友達)も有意に高まることが分かった。 3、集団SSTを開始する前に、社会的スキル得点が低かった児童(平均から-1SD以下)は、2年間の集団SSTの結果,集団SSTを開始する前に平均的な得点を示した児童(平均から-1SD以上で+1SD以下)とほぼ同じ水準にまでスキル得点を上昇させた。この結果から継続的な集団SSTは、当初、社会的スキル得点が低かった児童に大きな効果をもたらしたといえる。
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