研究概要 |
学級を単位とする集団SSTにとって最大の論点は、訓練効果の維持である。これまでに行なわれた集団SSTでは、進級に伴って担任教師が交替すると、維持効果が消失することが繰り返し確認されてきた。 本研究ではこのような結果が生じる原因を明らかにするために,まず実験的に進級に伴う担任教師の交替の影響を調べた。集団SSTの実施後2ヶ月で進級する時期を選んで、集団SSTを実施したところ、実施後ほんの2ヶ月程度で、集団SSTの訓練効果が消失することを確認した。このことから、集団SSTの効果は、社会的スキルの使用を日常的に強化する環境がなくなれば、比較的短期間に消失してしまうことが明らかになった。そこで以前に実施された集団SSTの振り返りを目的としたブースターセッションを導入したところ、社会的スキルの使用が増加する傾向にあることを見出した。すなわち、社会的スキルの使用を日常的に強化する環境を作ると共に、定期的なブースターセッションを導入することが社会的スキルの定着に効果的であることが示唆された。 そこで次の研究では,学校規模で、すべての学級において担任教師による集団SSTが実施された場合の訓練効果について検討した。このような環境では、担任教師やクラスメートが進級によって変わっても、学校全体に社会的スキルを使用することが奨励され,スキル使用に強化が随伴される機会が多いので,訓練終了後に担任教師やクラスメートが変わっても,社会的スキルが維持されると考えられた。結果は予想通りに学級編成が行われた学級においても、社会的スキルの実行が維持されていることが分かった(6ヵ月後の維持効果が認められた)。 以上の結果により,学校全体で取り組む集団SSTの維持効果が証明された。
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