本年度は、教師の授業研究に対する意欲を支える条件を探るため、授業研究が共同する場であると捉えた上で、インタビュー調査と縦断的なケース研究を実施した。まず、インタビュー調査では、各地の教育研究所や教育センターで実施されている授業研修のあり方に注目し、研修指導主事ら数名に、配慮している点や問題点などを尋ねた。とりわけ、仙台市教育センターの取り組みに注目し、授業リフレクション研究が、教師の子どもを見る眼を鍛え、授業研究の意欲を高めるという考えのもとで、多様な研修が組織されていることがわかった。 ケース研究については、現職教師による授業研究(アクションリサーチ)に共同研究者として参加し、教師の動機づけの変容の過程を、具体的な研究・研修環境のあり方とともに記述し、分析した。具体的には、「リフレクションシート」を用いた授業リフレクションの過程を分析、考察した。その結果、リフレクションの促進者であるプロンプターが、授業者の教育的な意図を理解しようと努めるなど、丹念に授業者の話を聞くプロセスを通して、授業者のリフレクションが深まっていくことなどが明らかになった。 以上のことなどから、授業研究における他者の重要性が改めて確認されるとともに、当該授業者の意図や見取り、子どもの姿の捉えを中核に据えた授業リフレクションが、教師の成長を促すともに、彼らの授業研究に対する意欲を高める可能性が示唆された。一般論が中心となりがちな研修から、授業者と学習者の固有性、個別性を重視した研修へと授業研修のあり方を抜本的に見直す必要性があると考えられる。
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