本研究では、授業研究に対する教師の意欲の実相を長期間にわたる縦断的な調査によって明らかにしながらそれを理論化すると同時に、教師の学習意欲を支える環境側の条件について、フィールドワーク、アクションリサーチなどの方法を積極的に用いながら実証的に検討することを主な目的としている。また、「教える」という営為自体に対する動機付けの理論化を推進するとともに、教師教育や教師研修の望ましいあり方を検討するための基礎的な資料を提供することを目指している。 第3年次の本年度(平成17年度)においては、学習支援環境に関する理論的な枠組みをもとに、教師集団の授業リフレクション過程に他者がどう関わればよいのかについて、アクションリサーチによって検討を進めてきた。具体的には、神奈川県内の2つの中学校、3つの小学校の校内研究に研究者が共同研究者として参加し、授業改善のアクションリサーチとともに取り組んでいく中で、授業改善に対する教師の意欲の推移を、参与観察やインタビューなどの主に質的アプローチの手法を用いて、データ収集と分析を行った。その結果、教師の授業研究に対する意欲をサポートする条件として以下の3点が明らかになった。すなわち、(1)現場の具体的な問題解決のために協同的なアクションリサーチを推進すること、(2)教師の「気づき」による授業の捉え直しを重視する「授業リフレクション」を中核に据えているということ、(3)実践者同士の「語る-聴く」という対話的関係を基礎とした「実践-評価コミュニティ」の場と人的ネットワークが構成されていることである。このような特徴を持つ環境システムを本研究では「実践サポートシステム」と名づけ、教師教育や教師研修のモデルとして提唱した。
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