本研究では、授業研究に対する教師の意欲の実相を長期間にわたる縦断的な調査によって明らかにしながらそれを理論化すると同時に、教師の学習意欲を支える環境側の条件について、フィールドワーク、アクションリサーチなどの方法を積極的に用いながら実証的に検討することを主な目的としている。また、「教える」という営為自体に対する動機づけの理論化を推進するとともに、教師教育や教師研修の望ましいあり方を検討するための基礎的な資料を提供することを目指している。 第4年次の本年度(平成18年度)においては、授業研究に関わるアクションリサーチに研究者が参加することによって、授業観察と授業コンサルテーションを実施し、授業検討会などにおける教師の授業リフレクションを分析することによって明らかになったことを、研究者の視点から理論化した。特に本年度は、「教師の学習意欲を支える環境側の条件」に研究の焦点を当て、実践をサポートするツールとしての「理論」に着目した。 具体的には、藤沢市教育文化センター・教育実践臨床研究部会での授業研究、神奈川県内の2つの中学校、3つの小学校の校内研究に研究者が共同研究者として参加し、授業改善のアクションリサーチに共同で取り組んだ。授業者の談話や実践記録を分析することを通して、授業研究を促進するキーワードの一つが「しかけ」という言葉であることがわかり、その点に着目して、アクションリサーチの一環として研究者が「しかけ概念」を理論化した。それらの分析全体を通して、教師の授業研究に対する意欲をサポートするツールとシステムの構築が教師教育および教員研修の重要な研究課題であることが明らかになった。
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