本研究では、授業研究に対する教師の意欲の実相を長期間にわたる縦断的な調査によって明らかにしながらそれを理論化すると同時に、教師の学習意欲を支える環境側の条件について、フィールドワーク、アクションリサーチなどの方法を積極的に用いながら実証的に検討することを主な目的とした。また、「教える」という営為自体に対する動機づけや教育評価の理論化を推進するとともに、教師教育や教師研修の望ましいあり方を検討するための基礎的な資料を提供することも目指した。 理論的なアプローチとして、動機づけ、教育評価、授業研究という本研究テーマと深く関わる概念について、先行研究をレビューすることなどを通して、再概念化を試みた。また、実証的なアプローチとして、フィールドワーク、アクションリサーチ、ケース研究などの方法を用いて、「教師の学習意欲を支える環境側の条件」を明らかにした。 本研究全体を通して明らかになった知見は以下の通りである。 1.教師の学習意欲を支えるために、有能感、自律性、関係性に関する教師の要求を満たすような学校環境を整えることが必要である。 2.教師自身の評価的思考、とりわけリフレクションを活性化するような授業研究を日常的に積み重ねることが、専門職としての教師の意欲を高める。 3.学習者の姿を可視化するようなツールやシステムを開発し、それを授業研究の場で活用することによって、教師自身によるより具体的な自己評価が可能になり、授業改善に向けた目標が明確化することを通して、教師の意欲が高まる。 以上の知見は、現職教育や教師研修を計画する上での指針として有益であろう。
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